円高の5年サイクルの転換点が近い~2ー3月の為替動向がポイント
2~3月の為替動向が今後数年間の円ドル為替の行方を大きく左右する可能性も
昨年12月以降の内外情勢の変化から、円高局面が終焉し、円安に転換する可能性が出てきました。特に、この2~3月の為替の動向が今後数年間の円ドル為替の行方を大きく左右する可能性があると思っていますので、もう一段の円高に向かうのか、円安に反転するのか、非常に注目しています。
円ドル為替には5年サイクルが存在する

理由は、円ドル為替の5年サイクルの存在です。円ドル為替には5年から6年のサイクルがあります。過去、円高になった時点を順に辿ると、まず1985年2月の1ドル=263円から1988年1月には120円まで急騰しました。次の円高は、1995年4月の79円75銭です。この1988年1月から1995年4月までの期間は6年3カ月になります。
次の円高は1999年11月の101円で、1995年4月から数えて4年7カ月です。その次の円高は2004年12月のやはり101円で、1999年11月から5年1カ月です。
前回の円高が2004年12月ということは、この1月で前回の円高時点から5年を超えたことになります。したがって、円高の5年サイクルのピークをいつ付けてもおかしくないと考えています。
昨年12月のコメントで、今年は1ドル=70円台に突入する可能性があると申し上げましたが、その予想の背景は、①当時の財務大臣である藤井財務相が円高論者で、円高容認発言を行っていること、②ドルキャリー取引が続き、リーマン危機でのストックの綻びの少ない日本円が余剰ドル資金の行き場の候補の一つになりうること、③鳩山政権下での日米摩擦が激化する可能性があること、です。しかも、例年2~3月は企業の海外配当の送金の関係で円高になりやすいことから、今年の2~3月にも1ドル=70円台突入がありうる、ただし1ドル=70円台は一時的で、その後は円安に転換する、したがって大きな影響はない、と考えていました。
一時的に急激な円高になっても、その後は円安に転換する、という予想の背景は、5年から6年のサイクルの存在です。
12月以降、内外情勢が激変
しかし、円高予想の根拠になった3つの要因がこの1カ月ほどの間に大きく変わりました。
第一に、今年の1月7日、財務大臣が交代しました。藤井前財務相に代わり、新しく財務相に就任した菅直人財務相は、就任後初めての記者会見で「経済界では1ドル=90円台半ばが適切という見方が多い。もう少し円安の方向に進めばいいと思っている」と発言しました。この発言を機に、円ドル為替市場は一時、円安方向に動き、1ドル=94円近くまで円安が進みました。
これとは逆に、藤井前財務相は昨年9月24日、米ガイトナー財務長官との会談で「外国為替市場で円売り・ドル買い介入を安易にしない」と発言し、日本政府の円高容認と受け止められ、11月末まで円高が一気に進行したことは周知のとおりです。
つまり、財務大臣の交代で、1月6日までの円高要因が円安要因に転換したということです。
さらに、最近の米金利の上昇等を考えるとドルキャリー取引の持続性に疑問符が生じています。日米摩擦についても、一部に日米摩擦緩和の動きがあります。
政治が大きな転換点を決定する
マーケットに対する私の基本的な認識は、第一に、政治が大きな転換点を決定する(大きなトレンドは政治で決まる)、第二に、マーケットにはサイクルが存在する、というものです。
昨年12月に政府・日銀がデフレに対する姿勢を大きく転換したうえ、、年初には円高容認の藤井大臣から、円安歓迎の菅直人財務相に交代しました。こうした政治の動きと円高のサイクルから考えると、昨年11月の84円台突入で5年サイクルの円高のピークを付けた可能性が出てきたと考えています。
この2~3月は急激な円高にはならない可能性がでてきたということです。仮に、2~3月に急激な円高になっても、政府・日銀の姿勢転換を考えると、追加的な金融緩和策が打ち出される可能性があります。したがって、仮に2~3月に急激な円高になっても、そこが5年サイクルのピークで、以後しばらくは円安傾向と予想しています。
もちろん、円ドル為替を支配する最大の要因は米国の意向です。1993年8月に誕生した細川政権はクリントン米大統領との会談が決裂し、円ドル為替は細川政権誕生時の1ドル=105円から、1995年4月末に1ドル=79.75円を記録しています
米国が鳩山政権をこれ以上追い込まない限り、最近の政治経済の状況と円高の5年サイクルを考慮すると、円ドル為替のマーケットトレンドは近々転換する可能性が高いと予想されます。
円高の影響は軽微
円高の影響を受ける代表的な業種は自動車業界と電機業界ですが、2010年3月期下期の円ドル為替レートについて、だいたい自動車業界が1ドル=85~90円、電機業界が90円前後を想定しています。
今までご説明しましたように、1985年以降、円高のピークは5年サイクルとなっています。12月から1月にかけての内外情勢の変化を考えると、円高の5年サイクルがピークを付けたか、転換点は近いと考えていますので、仮に一時的に円高になっても、大きなマイナス影響はないと考えています。逆に円安に転換してくると、日本経済ならびに日本株にとって大きなプラス材料になると考えています。
円高で日本株が下落すれば、投資の好機と考える
円ドル為替は今重要なポイントに差し掛かっています。2007年6月からの円高トレンドが円安に転換するのか、もう一段の円高があるのか、ということです。前記の図のように、2007年6月からの円高トレンドはまだ続いていますが、このまま円安が続き、2007年6月からの円高トレンドをブレークするかどうかという分岐点に差し掛かっています。トレンドがブレークされれば、2009年11月の84.82円が5年サイクルの円高のゴールとなり、今後、数年間は円安トレンドへの転換が予想されます。
2~3月に円高に転じ、仮に70円台に突入しても、あるいは85円前後で止まっても、そこが5年サイクルのゴールと予想されます。いずれにせよ、2007年6月からの円高トレンドが2009年11月で終了したか、間もなくかということだと考えています。その後は、新しい5年サイクルが始まる可能性が高く、今後数年間は円安方向への転換が予想されます。

2004年以降、円ドル為替と日経平均株価の関係は極めて密接です。仮に円高になっても、上記の理由から何ら恐れることはなく、円高で日本株が下落した場合は投資の好機と考えています。


吉永俊朗(よしなが・としろう)藍澤証券投資リサーチセンターアナリスト
九州大学卒業後、72年山一證券入社。山一証券経済研究所大阪支所長、企業調査第一部長、山一投資顧問投資調査部長、投資戦略部長。1998年東海丸万証券(現・東海東京証券)入社、企画部長。2000年、東海東京証券理事兼経営企画部長。07年藍澤証券アナリスト。著書に「100年たってもアメリカに勝てない日本」など。



