泉谷裕の「経営を誘導する管理制度」

「情報化マトリックス経営」を実現する管理会計の発想法

高付加価値率企業における収益管理部門の設定と仕組みー1

損益管理部門のマトリックス化による責任体制の確立  
                
企業組織には、生産、販売、開発、管理部門などがある。それぞれの部門は、企業活動の一部を分担し、責任を担って具体的な活動を遂行することで責任を果たしているが、それを定性的に評価するだけでなく、定量的に把握・評価し、モチベーションを喚起することで、より一層の成果をあげることが求められる。
 
一般的に高付加価値率企業は、工程が長く、付加コスト率も高い。高付加価値率であれば、通常なら売上高利益率は高くなるが、使用資本利益率がこれに比例する保証はない。

従って、高付加価値率企業ほど長い工程を細かく分けて、工程ごとに収益状況やコストを明らかにしていくことが求められる。こうして問題点を「見える化」する中で、収益を管理しながら、同時に責任体制を明確にしていく。また、生産高、コスト、利益を把握するだけでなく、工程ごとに使用している資本に対する利益率や回転率などの資本効率を見ていき、部門の評価や問題の認識をしていく。
 
単一製品なら単に工程別に責任部門をつくればよい。複数製品になれば当然、製品別に工程別の責任部門をつくる。しかし、異なる製品を共通する工程で生産することがある場合は、共通工程の原価部門のコストを一定の方式で製品別に分割して、製品別損益をつくる。このように工程別・製品別に損益管理部門をマトリックスにして、責任体制をつくっていく。

更に最近は、工場の分散、子会社化が進んできているので、製品別損益は工場や法人の枠をこえて作成しなくてはならなくなる。できれば、資本関係をもこえて、連鎖する一連のなかで責任体制をつくり、部門責任を全うしながら全体最適を追求できればよい。
 
責任体制のつくり方と原価分析
 
工程別責任部門は、生産作業単位、生産方式単位で部門を分ける。まずは、費用集計単位はできるだけ細かく設定し、次に費用集計単位の原価部門をある程度にまとめて、収益管理する部門(部門損益管理部門)をつくる。部門損益部門は、管理に必要な単位であるが、あまり小さくては意味がないし、大きすぎると問題点の認識ができない。
 
部門損益は、部門の収益やコストの状況を把握するもので、直接には原価管理や原価分析はできない。原価管理は別途、生産ロット単位、または製品単位で、細かく時間、物量、操業度、不良率、不良解析、収率、能率などを把握し、分析して行わなければならない。ただし、原価分析の必要な箇所については、この部門損益から優先度を探っていく。それらを踏まえて、部門損益を集計し、工場単位の損益管理に展開する。

なおコストは、原価部門や部門損益部門単位で発生はするが、その部門で完結するものではなく、前後の工程と有機的に繋がっている。後工程で発生する不良の大半は前工程に原因があり、前工程の特性により後工程の生産条件を決めなければならない。従って、コストを把握していく際、部門損益部門、原価部門に埋没してはならない。
 
一方、製品別損益は製品の損益管理、販売政策、さらにプロダクトポートフォリオ戦略の単位ともなる。製品別部門は市場、特性、生産方法の違いにより構成する。広義には同一の範疇のものであっても、細分すれば多くの種類がある。

従って、製品別責任部門は、その製品の事業を推進するうえで把握しておくべき単位を基本として、同一製品でも製造原価が異なる製造ラインが混在している場合は、類似工程ごとに分類する。この分類で川上の原料部門から完成品工程までの生産原価に販売部門費、本社費、更に研究開発費を通算する。当然、国内だけでなく海外生産部門、販売部門も管理対象に入れる。

プロフィール

泉谷裕(いずみたに・ひろし)村田製作所前代表取締役副社長  神戸大学卒業後、1958年村田製作所入社、取締役経理部長、常務取締役、専務取締役を経て、1995年代表取締役副社長。2003年同社常任顧問。著書の「利益が見えれば会社がわかる」で日経BP図書出版賞を受賞。野村総合研究所、住友ゴム工業社外監査役。日本CFO協会理事。

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