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石角完爾の「Jewish success(ユダヤエリートはなぜ成功するのか)」

国際弁護士Kanji Ishizumiが見た「智恵の民族」の教育法

ユダヤから学ぶ子供の読書習慣(下)~知的体力を鍛える高等教育

ボーディング・スクールの読書活用法

そしてそうした読書を前提に、テーマを与え、その本の内容ごとにエッセイを書かせ、教師が生徒と議論を重ねることで授業は進む。そのテーマでは、作者が何を言いたいかなどという大きなテーマを議論する。

日本では「古典」「国語」という科目で、「源氏物語」や「奥の細道」などの名作を学校でさわりの部分だけを教える。だが、全巻を読むことなどほとんどない。また、古典の授業も国語でも、文学作品の一部分を取り出し、一語一句分析するという、細かなことに関心が向くだろう。こういう細かな授業では、文学作品を読書する面白さが、なかなかつかめないだろう。

文学以外の授業、例えば歴史でも、理系の科目でも、同じように読書の宿題が大量に出る。夏休みには一教科一冊、合計で三~四冊の分厚い本を読み、エッセイを書く宿題が出るのだ。授業での使われる教科書の使い方、そして作り方も日米で違う。

日本の教科書は薄くてサイズも小さい。ランドセルで持ち運ぶことを想定しているのだろう。一方で、アメリカの教科書は、サイズは日本のよりもう一回り大きく、分厚くて重い。まるで電話帳くらいある。アメリカでは、親が自分の車で送り迎えし、またはスクールバスが巡回して、学校まで生徒をつれていく。また全寮制の学校も多い。そのため、教科書の重さをあまり配慮しない。

日本の場合は、教科書を絶対視し、そこから逸脱した授業を好ましいものとはしない。アメリカの場合の教科書は、日本と違い、参考図書である。子どもたちが家で読んでいることが前提だ。百科事典的、網羅的である。それから図表や絵や写真が極めて豊富に盛り込まれている。

そしてアメリカの授業では、特にボーディング・スクールでは、教科書から教師が逸脱することが奨励され、教材を教師が作ることや、生徒自身が作る学校もある。そして授業に独自性が求められる。その中で、教師は自ら読んだ本を子供に与え、議論によって授業を作り出していく。

高等教育では大量の読書が必要

大学・大学院の高等教育は、もっと大量に本を読まなければならなくなる。アメリカでは多くの大学では、授業の前に、大量の宿題、参考文献が出る。それを前提に、授業では議論の形で進む。日本の場合には、教授の講義録を「読むだけ」の講義が多いだろう。

アメリカの大学生は、本を読まないと、授業についていけない。そのために、学生の間では、速読術や要約術などの本が、かなり売れる。ポイントをつかみながら読む必要があるが、こうした訓練は実社会で、どのような仕事についても役立つだろう。語学のハンデキャップがある留学生はかなり大変だ。辞書を引きながら読んでいては間に合わない。

そして、授業は議論で行われる。参考文献をさまざまな観点から分析し、批判的に読む訓練をしていなければならない。文献と同じ答えをしていては、授業で陳腐な発言しかできなくなる。

だから入学以前から読書習癖がついていないと、大学教育についていけない。大量に本を読み、ポイントをつかみ、そして批判的に読むことを事前に訓練しなければならないのだ。ユダヤ人はアメリカの大学・大学院の成績の上位者を常に占める。こういうアメリカの高等教育の授業方法に、彼らの読書習慣が役立つためだろう。

日本は子供・学生の「本離れ」が著しい。もちろん、玉石混交の本があり、インターネットに手軽な情報があふれている現在、本をじっくり読みこもうとすることは確かに疲れる。また、つまらない本に当たることは時間の無駄だ。また「情報の道具化」が進行する中で、本も軽く、簡単なものが流行している。「手軽に情報を使いこなし、本を読まない」。こうした流れは加速する一方だ。

しかし、ユダヤ人の家庭や、アメリカのエリート校ではこの流れに逆行している。分厚い本を、かつてと同じように大量に本を読ませる。そしてそれは古典などが中心だ。私の知り合いの大学教授でも、ユダヤ人でも、子供に携帯は持たせない知人が多い。「読書の邪魔になる」というためだ。

「普遍的なもの」に思いを馳せ、じっくりと人類の知的遺産と格闘する経験は学校教育の中で必要だ。社会の中で知的な力による勝負をするとき、そうした訓練を受けた人、受けなかった人では成果が大きく違ってくる。これから社会に出ていく子供たちは、知的な体力を強める必要がある。大人たちも、そうした知的体力を鍛え続けなければならない。「手軽」な読書、また本を読まないなどの行為は、そうした知的体力を衰えさせる。

ユダヤ人は、幼いころから、聖書を読み込むことで、知的に鍛えられる。それが、教育さらには社会に出てからの、知の世界での大きな成果につながる。私たちも、こうしたユダヤ人の読書習慣を学ぶべきではないだろうか。

プロフィール

石角完爾(Kanji Ishizumi) 千代田国際経営法律事務所代表  1947年生まれ。京都大学在学中に国家公務員上級試験、司法試験に合格。通産省(現・経済産業省係長)を経て、ハーバード大学ロースクール修士、ペンシルバニア大学修士。ペンシルバニア大学証券金融研究所研究員、米国証券取引委員会研修生、シャーマン・アンド・スターリング法律事務所(ニューヨーク Wall Street)勤務を経て、千代田国際経営法律事務所を設立、代表に就任。元ハーバードクラブオブジャパン(ハーバード日本同窓会)幹事。国際弁護士として、世界をまたに駆けて活躍中。著書に「アメリカのスーパーエリート教育」など多数。弁護士、弁理士。米国認定教育コンサルタント。

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